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水質汚染の主な原因は生活排水?国内外の取り組みも解説

日本では、蛇口をひねればきれいな水が出てきます。そのため「水質汚染」と聞いても身近なことには感じられないかもしれません。しかし水質汚染は世界規模で深刻な問題であり、途上国の人々や生態系の命をおびやかしているのです。

水質汚染でどんな問題が起きているのか

「水質汚染」とは、川や湖、海などの水質が悪化することを意味します。その原因としては、工場などからの「産業排水」、私たちの日常生活で出される「生活排水」などがあげられます。

水質汚染は、私たちの生活、さらには地球環境に対してさまざまな影響を及ぼします。では、具体的にどんな問題が起きているのでしょうか。

①病気のまん延

アフリカなどの途上国では、上水設備や下水処理設備といったインフラが整っておらず、汚染された水を飲んで多くの人々が下痢や重篤な感染症にかかっています。不衛生な水が原因による疾患で死亡する子どもの数は、年間約180万人にものぼるといわれています。

日本など優れた水処理技術を持つ国が、途上国で浄水処理装置などの設置を行ってはいるものの、現地では適切に管理できていないという現状です。

≪参考文献≫

②生態系の破壊

水質汚染は生態系にも大きな影響を及ぼします。例えば、カンボジア・メコン川に生息するカワゴンドウ(川イルカ)は、2003年以降に回収された50体以上の死体から有毒化学物質が検出されており、水質汚染により絶滅危機に瀕していることが確認されています。

また、工業排水によって富栄養化(海水や川の水にふくまれる栄養分が自然の状態より増えすぎてしまうこと)が進み、赤潮やアオコが発生することで生態系が乱れ、多くの水生生物が死んでしまうリスクが高まります。

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③経済的損失

水質汚染は経済的な損失も生み出します。福島第一原発は、東日本大震災で被災した時に、大量の放射性物質が海へ流れたことが大きく報道されました。その結果、被災から10年以上経った今も汚染のイメージが根強く残り、水産業の生産力を回復しきれていない現状です。

また②で取り上げた「生態系の破壊」が漁業に損失を与えることも、想像に難くないでしょう。

≪参考文献≫

水質汚染の主な原因

水質汚染の主な原因は以下の3つです。

①産業排水

産業排水とは、工場や農場などから排出される水のことです。かつて日本でも、高度経済成長期に「水俣病」や「イタイイタイ病」といった病気が発生し、大きな問題になりましたが、これらは産業排水による水質汚染が原因でした。

その後、産業排水に関する規制が強化され、今では水質汚染につながる産業排水は出にくくなっています。

②生活排水

生活排水とは、台所や風呂・トイレなど日常生活において発生する排水のことです。産業排水に関する規制が強化された現在、水質汚染の最大の原因は、生活排水といえるでしょう。家庭から流れ出る生活排水は、川へ流れ込み、川から海へ流れ込んで、海を汚染しています。

食品を例にとって見てみましょう。例えば、みそ汁1杯をそのまま排水口に流した場合、魚が棲める水質に戻すためには、浴槽約4杯分もの水が必要になります。ビール1杯では浴槽12杯分、牛乳1杯では浴槽16杯分にも及びます。

③気候変動(地球温暖化)

地球温暖化などの気候変動も、水質汚染の原因になっているといわれています。例えば、水温上昇によってプランクトンの増殖が起きれば、水質の悪化につながります。他にも河川流量の変化、湖水水位の変化、海面上昇による地下水の塩水化など、などさまざまな影響があり、これらが海の水質を変えてしまっているのです。

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具体的な取り組み

①世界規模の取り組み

現在は、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」のもと、世界的に水質改善への取り組みが進んでいます。17のゴールのうち、ゴール6には以下の目標が設定されています。

ゴール6「安全な水とトイレを世界中に(水・衛生分野)」
全ての人々に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保すること

②日本での取り組み

日本は、高度経済成長期に起きた水質汚染問題の教訓から、排水処理施設の整備、技術開発の推進を大幅に進めてきました。その技術力は海外でも評価されており、開発途上国にも貢献しています。

例えば、近年注目されている日本の技術に「微生物活性材バクチャー」というものがあります。「バクチャー」とは「Back to the Nature」を略した造語で、微生物の力を借りて自然を本来の姿に戻すことができる新しい技術のこと。この技術により、魚の大量死が発生していたベトナム・クアンニン省において、水質状態が大幅に改善されたという結果が出ています。

その他、具体的な法律としては、1970年に「水質汚濁防止法」、1984年に「湖沼水質保全特別措置法」を制定しています。

≪参考文献≫

ひとりひとりの意識改革を!

生活排水を減らすためには、各家庭が自覚と責任をもって生活していく必要があります。台所には必ず三角コーナーや水切りネットを用意し、調理くずや食べ残しを流さないようにしましょう。もちろん、食べ残しが出ないよう「買いすぎない・作りすぎない」を心がけるのが前提です。水で洗い出す前に、いらなくなった雑誌や新聞紙で食器汚れをふき取っておくと、水や洗剤の量も少なくて済むのでおすすめです。

まとめ

他にも、環境負荷の低い洗剤を選ぶ、洗剤を使う際は必要な分だけ使う、生ゴミをコンポストで肥料にする、米のとぎ汁を庭や畑にまくなど、さまざまな対策ができるはずです。工夫を楽しみながら、環境に優しい選択をしていきましょう。