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食料自給率を向上させて水不足も改善!その具体策とは…?

日本は食料自給率が低いことで知られています。
この食料自給率の低さが、世界の水不足にも大きく関係しているのをご存知でしょうか?
この記事では、食料自給率と水不足の関係性を解説したあと、食料自給率向上のために私たちができる具体策を見ていきます。

食料自給率と水不足の関係性

「バーチャルウォーター」という考え方

日本の食料自給率(カロリーベース)が低いことは、ご存知の方も多いでしょう。

2019年における日本の食料自給率(カロリーベース)は38%。一方、諸外国の数値を見てみると、アメリカ131%、フランス130%、ドイツ95%、イギリス68%となっており、日本は韓国と並んで極めて低い水準にあります。

さて、食料自給率が低いということは、海外から多くの食料を輸入しているということです。このとき、単に「食料」だけを輸入しているのではなく、その食料をつくる過程で使われた「水」も輸入しているのだ、と考えることができます。これがいわゆる「バーチャルウォーター」と呼ばれる考え方です。

すなわちバーチャルウォーターとは「その食料を自分の国で生産するとした場合に、必要となる水の推定量」、「直接利用しているわけではないけれど、間接的に“目に見えない形”で利用されている水」のことを指しています。

≪参考文献≫

日本の現状と世界の水不足

食料の多くを輸入に頼っている日本は、バーチャルウォーターの消費量も多く、海外の水資源を多く利用しているということになります。日本に住んでいると、普段の生活で水不足を実感する機会はあまりないでしょう。しかし、日本はバーチャルウォーターの輸入を通じて海外の水不足や水質汚濁といった水問題と関係しているのです。

なお、2005 年に海外から日本に輸入されたバーチャルウォーターは約800 億立方メートルに及ぶといわれており、これは日本国内で使用される年間水使用量とほぼ同じです。

≪参考文献≫

食料自給率向上のための政府の取り組み

こうした状況を鑑みて、農林水産省は2008年に「FOOD ACTION NIPPON(フード・アクション・ニッポン)」と呼ばれる運動をスタートしました。これは食料自給率の向上や食の安全などを目的としたもので、2021年には「NIPPON FOOD SHIFT(ニッポン・フード・シフト)」へ移行し、再スタートを切っています。

現在、日本政府は「2025年度までに食料自給率(カロリーベース)を45%に向上させる」という数値目標を掲げ、その施策として、農業の担い手の育成、農地の確保、スマート農業の支援などさまざまな取り組みを進めています。

私たちが日常でできる3つのこと

ここからは、食料自給率の向上をはじめ、水問題を改善するために私たち一人ひとりにできることはどんなことがあるのか、具体的に見ていきましょう。

国産の食材を選び、地産地消を意識する

食料自給率を向上させるためには、まず国内で生産された食べ物を選び、“食卓の食料自給率を向上させること”が大切です。そしてその際、意識したいのが「地産地消」です。

地産地消とは、地域で生産された生産物を、その地域で消費すること。ではなぜ、地産地消が食料自給率の向上につながるのでしょうか。

まず、地産地消であれば産地から消費する場所までの距離が短くなります。そのため、輸送時や、輸送までの保管の際に排出されるCO2(二酸化炭素)・NOx(窒素酸化物)を抑えることができます。これらの排ガスは異常気象や地球温暖化の主要因でもあるため、排ガスを抑えることは水不足の改善に直結してきます。この考え方は「フードマイレージ(食料の輸送距離)」と呼ばれるもの。地産地消の食材はフードマイレージが小さく、地球に優しいのです。

また、輸送距離が短い分鮮度が高く保たれ、地場農産物としてアピールしやすくなるというメリットもあります。さらには生産者と消費者の間に「顔が見えて、話ができる」というコミュニケーションが生まれることで、消費者の安心感や、農産物に対する愛着も深まります。

こうして地場農産物の消費を拡大し、地元の農業を活性化させることが、食料自給率の向上につながります。

≪参考文献≫

日本型の食生活を中心にする

日本の食料自給率が低くなった原因のひとつに、食生活の欧米化があげられます。海外から安価な小麦や肉などを大量に輸入するようになり、これらの消費量が増えたことで、米を主食とした食生活が崩れていったのです。

ですから、お米(ごはん)や国産野菜を中心とした従来の日本型の食生活(いわゆる和食)を心がけるだけでも、結果的に食料自給率の向上につながります。小麦や肉類(またはそれらを原材料に使っている加工品)を購入する際は、なるべく国産のものを選ぶようにしましょう。

食品ロスが出ないように心がける

日本は食品ロスが非常に多い国です。年間1人あたりの平均食品ロス量は約47kgといわれており、年間1人あたりが食べる米の量(約54kg)と大差がありません。食料を廃棄するということは、その食料を生産するのに使った大量の水をも捨ててしまっているということ。水不足を考えるうえでも、食品ロスは深刻な問題なのです。

“大量消費・大量廃棄”が当たり前になってしまった現状を見直し、適切な分だけ購入・消費する。これは国レベルでも個人レベルでも、極めて大切なことです。 無駄な廃棄や食べ残しがないように、日々の生活で一人ひとりが心がけたいものです。

なお、近年は「リサイクルループ」といった取り組みも積極的に行われています。これは、工場やスーパーなどで出た廃棄物を集めて飼料や肥料を製造し、農家へ運んで使ってもらい、そこで育った野菜や畜産物が再び工場やスーパーなどに運ばれる、という循環型モデルを指します。こうした循環ができるようになると、より食料自給率が改善していくでしょう。

≪参考文献≫

まとめ

日本が世界の水不足とどのように関係しているのか、食料自給率やバーチャルウォーターの観点からおわかりいただけたと思います。

世界の水不足問題は、誰にとっても“他人ごと”ではありません。そしてその解決策のひとつである「食料自給率の改善」のために、私たちが日常でできることはたくさんあります。まずは日々の買い物や食事について、今一度考えてみてはいかがでしょうか。